水分補給の大切さ
水分補給
Fluid Balance and Osmolarity
疲れがとれない、活力がない...それって水分不足?それとも電解質のアンバランス?水は生命にとって不可欠なものであり、人間は水がなければ数日しか生きられません。水は乳幼児の体重の75%から高齢者の55%を占め、細胞のホメオスタシスと生命維持に不可欠なものです。この記事では水の摂取パターンと摂取に関連するいくつかの要因、水のホメオスタシスの背後にある複雑なメカニズム、水の摂取量の変化が健康と活力、体重、人間のパフォーマンスと機能に及ぼす影響など、水に関する知識やデーターを読者の皆さんと一緒に理解することを目的としています。
水というと軟水や硬水、湧き水や井戸水、炭酸水や蒸留水など、あらゆる種類の水が我々の日常に溢れています。さらに、私たちは飲料として直接水を得るだけでなく、食物からも水を得ており、ごくわずかですが、栄養素を酸化する仮定からも代謝水として水を得ています。飲み物や食べ物から得られる水の割合は食事に含まれる果物や野菜の割合によって異なります。
体液バランスの構成要素のほとんどは体水分の状態に対応するホメオスタシスによって制御されています。これらの機能は繊細かつ正確であり、わずか数百ミリリットルの水分不足や水分過剰でコンディションが左右されます。アスリートであれば敏感にパフォーマンスやムードで直ぐに気づくかもしれませんが、普通の一般人は知らずのうちに慢性的な脱水症状になっている人もいます。
水分不足になると細胞外のイオン濃度が上昇し、細胞内の水分が奪われて細胞が収縮します。(後ほど詳しく説明します)この収縮は2種類の脳センサーによって検出されます。1つは喉の渇きをコントロールします。もう1つは主に抗利尿ホルモンであるバソプレシンを介して腎臓にメッセージを送り、より濃縮された少量の尿を生成することで尿の排泄を制御します。体内に水が過剰にある場合は逆のプロセスが起こり、細胞は水分を吸収し、喉の渇きが抑制され、腎臓からはより多くの水分が排泄されます。
このように腎臓は体液バランスの調整に重要な役割を果たしています。腎臓は水が豊富にあればあるほど効率的に機能します。水分不足の状態だと腎臓がより濃縮された尿を出します。これは新陳代謝において、エネルギーコストがかかり、腎機能に悪影響を与えます。このような事態は、腎臓に負担がかかっている場合に起こりやすく、例えば、塩分や有害物質を過剰に含んだ食事をしている場合には腎臓からの排泄が必要になります。なので十分な水を飲むことは健康な腎機能を保つことにつながります。
電解質の働きとAction Potentialを理解する
電解質とは一言でいえば「コミュニケーション」であり、「コミュニケーション」がなければ、私たちの体は機能しません。体内の電解質を介して、体がどのように動くのかを簡単な手順で説明していきます。活動電位は脳が信号をシナプスに送るところから始まります。例えば、ダンベルを使って筋トレするとしましょう。脳からの刺激が神経を通じて筋肉に伝達され、「腕を動かしたい」という信号を送り、ダンベルを持ち上げたい、実際に筋肉を動かして持ち上げる、という動作が達成されます。
この活動電位は主にナトリウムイオンやカリウムイオンが細胞内外の濃度差に従ってイオンチャネルを通じて受動的拡散が生じて起きるものです。ナトリウム(Na+)は陽イオンでプラスに帯電しています。小学校の理科の実験で食塩水が電気を通す実験をした記憶がある方もいると思います。神経伝達から動作までの過程で、先ずはナトリウムが細胞の中に入り込むことから始まります。すると細胞膜の内側の電位が上昇したため、それを元の濃度に戻そうとカリウムチャネルが開きカリウム(K+)が細胞膜の外側へ出ていきます。
OK!じゃあ、どんどんNa+を細胞内に送ってやろうぜ!とはなりません。細胞内はカリウムが多く存在し、同時にナトリウムチャネルが閉じます。神経細胞の細胞内に高濃度の電荷が発生し、その電荷は2つの異なる行動をとります。別の神経細胞に接続したり、筋肉のシナプスに到達して何かを誘発したりします。つまり、ナトリウムとカリウムは神経の中で常にこの綱引きをしています。お互いに連動して、最終的に筋肉などにたどり着いたときに、シナプスと接触して、別のプロセスが始まります。
次はカルシウムとマグネシウムについてです。引き続き筋肉を動かすことを例にすると、プラスに帯電した正電荷が筋肉に繋がっているシナプスに辿り着くとカルシウムチャネルが活性化します。つまりナトリウムがカルシウムにメッセージを渡しているような感じです。
カルシウムは興奮性伝達で重要な役割を果たします。興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸を分泌して筋肉を収縮させます。よくカルシウムは興奮させて、マグネシウムはリラックスさせる、と言われてますよね。
カルシウムチャネルが開き、カルシウムイオンが流入すると、アセチルコリンという神経伝達物質の放出を引き起こし、筋繊維で活動電位が起こります。つまり、カルシウムがナトリウムとカリウムを筋肉で仕事をさせるトリガーになるので、ナトリウム・カリウム・その他の電解質が神経でも筋肉でも使用されます。だから激しい運動中に筋肉がつったりします。原因はナトリウムとカルシウムは筋肉をロックしてしまうからです。カリウムがそのロックを解除してくれることを考えると、大体は運動中にカリウムが不足している場合が多いです。
カルシウムが常に活性化されていると常に緊張した状態になるので、基本的にストレスですよね?マグネシウムはGABA受容体に作用してGABAの神経伝達を活性化します。またマグネシウム・ブロックと呼ばれ、余分なカルシウムが入ってこないようにマグネシウムイオンがNMDA受容体の活動を阻害します。つまり、マグネシウムがリラックスする経路を活性化しています。
カルシウムとマグネシウムは拮抗関係にあります。ナトリウムやカリウムのようにお互いに違う役割で働いています。両者は非常に密接に連絡を取り合っており、このコミュニケーションが十分な量のナトリウムを確保するための大きな鍵となります。ナトリウムは十分な量が必要で、カリウムもそれに見合う量が必要です。ナトリウムだけでなく、マグネシウムもとても必要です。
カルシウムは非常に重要ですが、私たちの住む現代社会ではカルシウムを添加された食品や、カルシウムを多く含む食品がたくさん存在します。しかし、マグネシウムやカリウムを多く含む食品、緑の葉っぱ類の野菜や海藻は不足しがちですよね?そのためバランスが悪くなってしまうのです。
脱水の種類(高張性脱水・低張性脱水・等張性脱水)
電解質を理解するのは大切なのはわかった。その電解質を含む水とセットで考えることがもっと大事です。冒頭に記述したとおり、私たちの体重の約60%は水です。そんな大事な水分が足りなくなってしまった状態が脱水ですが、そもそも脱水には3種類もあって、単純に水が足りない状態という訳ではありません。脱水の病態を理解するためには知識を整理しておかなければいけません。体の組織構造とその特徴を確認しましょう。
まずは組織構造です。私たちの体は細胞が集まってできています。そして細胞の間を血管が走っています。細胞と血管の隙間は間質と呼ばれています。下のイメージでは、それぞれ細胞、間質、血管を表しています。
まず血管にはご存知の通り血液として血漿(Blood plasma)という液体が流れています。間質は組織液(Interstitial fluid)という液体で満たされています。この液体は間質液とも呼ばれ、組織液は血液の血漿が染み出して作られたものなので似たような成分が入っています。どちらも細胞の外にあるので二つをまとめて細胞外液(extracellular fluid)となります。細胞は細胞内液(intracellular fluid)という液体で満たされています。
実際には体内にある水分のうち2/3が細胞内液、1/3が細胞外液に分布しています。そして細胞外液のうち3/4が組織液、1/4が血漿として存在しています。
格闘家仲間が計量直前にジョークで「最悪あと数百グラムオーバーだったら血を抜くかw」みたいなことをふざけて言ったりしてますが、血液は意外と少ないんですよね。
注目して欲しいのが細胞外液と細胞内液での成分の違いです。細胞外液にはナトリウムが多く含まれていて、一方の細胞内液にはカリウムが多く含まれています。もちろん細胞外液にもカリウムはありますし、細胞内ナトリウムはありますが、すごく少ないです。
脱水を理解するためにもう一つ重要な特徴があります。それは細胞膜が半透膜な性質を持っていて水を通すことができるということです。
水欠乏性脱水(高張性脱水)
実は私たちは何もしなくても水を失っていきます。呼吸や粘膜からの蒸発によるものなんですがこれを不感蒸泄(transepidermal water loss;TEWL)と言います。
不感蒸泄は1日で500mlくらいで、蒸発するのは全て細胞外液です。細胞外液の部分から水だけがなくなっていくと細胞外液のイオン濃度が上がってしまいます。
いつもよりナトリウム濃度が上がったということは細胞外液の浸透圧が上がっていることを意味します。すると濃度のバランスが崩れて、恒常性の原理から半透膜を隔てた細胞内液から水を引っ張ってしまうのです。そうすると細胞内液の適切な量を保てなくなります。最終的には細胞外液の減少により細胞内液までも減ってしまいます。このように細胞外液の水が減少して起こる脱水は水欠乏性脱水と呼ばれます。
この脱水は細胞外液のナトリウム濃度が高くなっている脱水症状です。つまり浸透圧が上昇して起きているので高張性脱水といいます。この脱水はどういう状況で生じやすいのでしょうか?私たちには不感蒸泄があるので適切な水分を補給していなければ発生しやすくなります。意識障害や食欲低下で、そもそも水の摂取が減少している状況などではより発生しやすいと言えます。極端な例ですが、醤油を一気飲みすると高張性脱水は高ナトリウム血症をともない細胞内脱水が起こり、数時間以内に頭痛,けいれんや高熱,意識消失などの神経症状が起こります。
Na欠乏性脱水
水欠乏性脱水と違うパターンで起こる脱水は汗をかいた時、水欠乏性脱水にならないよう水を飲み続けた、としましょう...
皆さんご存知の通り汗はしょっぱいですよね?つまりナトリウムが含まれています。嘔吐や下痢も体液なのでナトリウムがたくさん含まれており、もちろん尿にも含まれています。それなのに水だけを補給すると水欠乏性脱水は防げますが、今度はナトリウムが足りなくなってしまいます。
ここでもポイントは浸透圧です。ナトリウムが欠乏すると今度は細胞外液の浸透圧が正常よりも下がってしまいます。つまり細胞内液の浸透圧が細胞外液に比べ相対的に高くなってしまうというわけです。
すると今度は逆に細胞内液の方へ水が引っ張られてしまいます。その結果、細胞内液は水が過剰に、細胞外液は水が足りなくなってしまい、これも脱水の一つでナトリウムが足りなくて起きてしまうので、ナトリウム欠乏性脱水と呼ばれます。さっきと違い細胞外液の浸透圧が下がって起きているので低張性脱水とも呼ばれます。
発汗や嘔吐下痢の際に水だけでなく塩も補給しましょう、と言われる理由を生理学的に理解していただいたと思います。炎天下のレースでマラソンランナーが用意した電解質や糖分の含まれた給水ボトルをキャッチできずに、代わりに真水をガブ飲みした結果起こる脱水症状でもあります。
等張性脱水
最後に3種類目の脱水です。これまでと違って水とナトリウムのどちらも足りないというパターンです。これは主に出血や熱傷などで血液や組織液がそのまま失われてしまった場合です。
水もナトリウムも同じくらい失うと細胞外液自体は減っていますが、ナトリウム濃度は変わらないというような状態が起きます。ナトリウム濃度が変わらなければ浸透圧も変わりません。そして浸透圧が変わらなければ水の移動は起きませんから単純に水もナトリウムもどちらも同じように足りていない状態です。浸透圧の変化がないパターンの脱水を等張性脱水と呼びます。水もナトリウムも足りていないので混合性脱水ともいいます。
後ほどアスリートや激しい運動する人、特別なダイエットをしている方への電解質と水分補給を詳しく説明しますが、あくまでもタテキ個人の目安として、1時間以内の運動でしたら水だけでも大丈夫だと思います。もちろん短時間だけど極端にハードな運動をする場合や集中力やパフォーマンス向上を目指すなら別の話です。
3タイプの脱水症状の共通点と相違点
これら3つの脱水すべてに共通していることは細胞外液が減少しているという点です。細胞外液の減少によってみられる症状で、代表的なものは以下の3つです。
Turgorの低下
血圧の低下または脈拍増加
尿量減少
これらの症状は三つのタイプ、全ての脱水症状で生じます。
Turgorの低下は肌のハリがなくなるという意味です。アメリカの大学で学生時代にFirst Aidの授業で実習した記憶があります。皮膚を摘み、摘んだ後が戻らなければ「ハリがない」つまりTurgorが低下していると判断します。
次に血圧低下についてです。細胞外液とは血漿と組織液のことなので、細胞外液減少は血漿の減少と考えられます。当然ながら、血管を流れる血漿が減れば血圧も下がります。一方で、血圧が下がると心臓は血液を届けようと頑張るので脈拍は上がります。
尿量減少は細胞外液が減少すると体はこれ以上水を減らしたくないと判断して脳下垂体からバソプレシン(抗利尿ホルモン)が分泌されます。このホルモンは尿の生成を減らして水分を体内にキープし、細胞外液量を保とうとします。そのため尿量は減少します。
脱水では細胞外液の減少という共通の状況によってTurgor低下、血圧の低下、尿量の減少といった症状が起きます。しかし、細胞外液の減少量には差があり、3つのタイプの中で最も細胞外液が減少しているのはナトリウム欠乏性脱水です。そのため、他のタイプの脱水よりもTurgorが低下しやすく、血圧低下や頻脈も他のタイプより生じやすいです。脱水のタイプによって症状に差があるのはこのように状態の差があるからです。
塩抜きをして仕上げるボディービルダー、そして格闘家であるタテキも計量直前のカラカラを体験していますので、一般の方が我々の減量や水分コントロールをマネするのがいかに危険かを理解いただければ幸いです。
尿量減少もナトリウム欠乏性脱水で生じやすいのかというと、少し違います。トイレに行く回数が減るのは水欠乏性脱水でよく起こります。理由としては抗利尿ホルモンは細胞外減少だけでなく浸透圧の上昇でも分泌されるからです。細胞外液の浸透圧が上昇するとそれ以上浸透圧が上がらないように水分量をキープしなければいけない、ということで抗利尿ホルモンがもっと分泌されます。
この3つのタイプの脱水の中で浸透圧が上がっているのは高張性脱水、つまり水欠乏性脱水です。そのため、この脱水では尿量減少が他のものより強く生じることになります。なので、汗をかかない、水をあんまり飲まない、体重計で体水分量が低めと表示されたの方こそ、「水をたくさん飲みましょう」というメッセージを直球で受け取っていただいて構いません。ちなみに水分不足で便が硬くなることによる便秘も脱水の症状です。
ここまでの話では細胞外液の現象に注目して観てきましたが、細胞内液にも異常が起きています。細胞内液が減ると細胞が水を求めて強い口渇感が生じます。これは水欠乏性脱水の特徴で、口渇感を感じて水を補給できれば水欠乏性脱水を緩和できますが、高齢者は口渇感を感じにくいので、気づかないまま脱水が進行しやすいです。おじいちゃんとおばあちゃんの水分補給を家族がサポートしていきましょう。また、細胞内液が減ると粘膜の乾燥という症状も現れます。
逆にナトリウム欠乏性脱水のように細胞内液が増えると細胞浮腫という状態になります。この結果、頭痛や嘔吐といった症状が現れます。この二つはナトリウム欠乏性脱水の特徴です。水欠乏性脱水とは逆に細胞内の水分量は十分なので口渇感や粘膜の乾燥などはあまり見られません。 細胞内液量の異常によって水欠乏性脱水では効果粘膜の乾燥、ナトリウム欠乏性脱水では頭痛や嘔吐といったように特徴的な症状があります。脱水による細胞内液へのこのような影響は脳の神経細胞にも及びます。そして神経細胞が水欠乏や細胞浮腫の状態になると痙攣や意識障害といった症状につながります。
減塩は本当に正しいのか?
2011年にJournal of the American Medical Associationに掲載されたナトリウムの摂取量と脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患に関する研究で我々の常識とは異なる結果が発表されました。上記のグラフは推定24時間尿中ナトリウム排泄量と心血管死亡、脳卒中、心筋梗塞、うっ血性心不全による入院の複合指標です。
1日あたりのナトリウム摂取量が2g未満の人は健康被害を受ける可能性が非常に高く、脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患の発生率が最も低かったのは1日あたりのナトリウム摂取量が約5gの場合でした。これはアメリカにおいてアメリカ心臓協会、食品医薬品局、コロナで有名になった疾病予防管理センターが推奨している値の2倍以上です。特に興味深いのは、この研究の著者が1日2g以下の摂取量の人たちと同程度の心血管疾患の発生率にするためには1日8gのナトリウムを摂取しなければならないと指摘していることです。
また、Framingham Offspring Studyの研究では高血圧患者にナトリウム制限が効果的でないだけでなく、1日あたりのナトリウム摂取量が2.5g以下の人は、それ以上の量を摂取している人に比べて常に血圧が高いという結果が出ています。この研究はナトリウムの摂取量を減らすことが必要(減塩しましょう)と考えられる集団を対象に行われましたが、そうではなかった... ということです。これらの研究では心血管疾患がある人々を対象としています。結論ではナトリウム制限(減塩)ではなく、カリウムとマグネシウムが心血管の健康に重要であることを示しています。
タテキのようにバケツの水をかぶったように汗をかくアスリートや、電解質の必要量が多くて健康で活発な人たちの場合はどうなるのでしょうか?
Journal of Sports Science誌に掲載されたこの記事からは活動的な人々がどれほど多くのナトリウムと電解質を必要としているかを知ることができます。
「激しい運動や気温の高い日には、水と電解質を含んだ汗が出る。活動的なアスリートが暑さにさらされている間に1日に失う水(4-10L)とナトリウム(3500-7000mg)は、水と電解質の不足を引き起こす可能性がある...」
これらの数値は、実際には驚異的な数値ではなく、心血管疾患患者にとっても妥当な摂取量の範囲内ですが、ほとんどのアスリート(特にパレオ食、ローカーボ食、ケトジェニック食を実践している健康に気遣ってるアスリート)にとっては「高すぎる」と思われるレベルです。
適切なナトリウムの摂取をしないことが低炭水化物ダイエットを行う際の疲労やパフォーマンスの低下の主な原因となります。電解質がいかに重要であるか、体内でどのような働きをしているかを考えれば、一目瞭然です。なぜ私たちがこのように感じるのか食事内容と合わせて深堀りたいと思います。
ダイエットと電解質
肥満、心臓病、そして一般的に生活習慣病と呼ばれる病気の増加の原因は炭水化物、特に砂糖と脂肪のどちらにあるのか?という論争が60年近く続いています。間違いない事は精製された炭水化物、砂糖、加工された脂肪の組み合わせがみのまわりジャンクフードを形成していることです。「砂糖は適度に摂れば問題ない」と多くの栄養士やトレーナーが言っていますが、タテキの結論は「時と場合による」です。
一番注目しないといけない部分は一般的に砂糖を単独ではあまり食べないということです。砂糖は、焼き菓子やソーダ、さらにはスポーツドリンクにも加えられていますが、これらには電解質がほとんど含まれておらず、砂糖の量も多すぎます。
日本人は平均1年間に約25.2kgの砂糖を消費しています。多くの「なんとかダイエット」は加工食品や生成された砂糖の摂取を控えましょう、と唱えていますので、多くの方が〇〇ダイエットを開始したら○kg痩せた、後に体重減少が止まって諦めて知らずの内に砂糖の摂取が増えてリバウンドする理由だとタテキは勝手に思っています。この量はとっても多すぎであり、低糖質ダイエットの効果を感じて流行る理由も頷けます。
低炭水化物ダイエットやケトジェニックダイエットを始めた人の多くは、一般的に「ケト・フルー」と呼ばれる症状を経験します。これは疲労感、不機嫌さ、身体能力の低下、痙攣、頭がボーっとするなどの症状です。
炭水化物を控えている人の電解質不足は2つの重要な要因によって引き起こされています。この2つは共にナトリウムが関係しています。
先ずローカーボ食に切り替えるとナトリウムを多く含む加工食品を排除することになります。(ポテチやせんべいなどNGですからね)
次に炭水化物を控えるとインスリンレベルが低いため、糖質を体内に蓄えるためにはグリコーゲンという形でエネルギーを蓄えますが、その時に糖質を貯蔵するための結合水(bounding water)が必要なくなるので、腎臓がナトリウムとカリウムを尿を通じて排出します。つまり低炭水化物ダイエットでは大量のミネラルが失われます。上記の説明を読んだ皆さんなら既にパフォーマンスの低下の理由が理解できると思います。
人が思い通りのパフォーマンスを発揮できない主な理由は炭水化物の不足ではありません。ナトリウムが不足しているからです。大量のナトリウムが必要だとは言いませんが低糖質、ケトジェニックダイエットではナトリウムが失われるので、もっと摂取しないといけません。そうすることで活動電位が行われて、神経や筋肉の中で電解質がコミニュケーションをとることで我々は生命活動を行っています。
興味深いのは「ケトジェニックダイエットとフィジカルパフォーマンス」の論文でイヌイットの文化に注目しています。彼らはケトジェニック・ダイエットをしています。鯨の脂身やアザラシを食べます。3大栄養素のPCF(Protein Carb Fat・タンパク質、炭水化物、脂質)のバランスはかなり高脂肪な食生活となっています。ソーダーやおにぎりとは無縁の彼らはケトジェニックな食事ですが、論文の一部から引用します。
"The Inuit people lived much of the year on coastal ice (which is partially desalinated sea water), and much of their food consisted of soup made with meat in a broth from this brackish source of water."
”イヌイットの人々は1年の大半を沿岸の氷(海水を一部脱塩したもの)の上で生活しており、食事の多くはこの海塩が含まれた水を使ったスープに肉を入れたものだった。”
疲労感や倦怠感に悩まされることがあったらイヌイットの人々の歴史や文化が続きませんよね?彼らの主な水源は海氷を溶かしたものです。この記事を作成するにあたってとても勉強になりました。
慢性的な脱水症状
慢性的な脱水症状は1日にどれだけ水分を摂取したかに関わらず、脱水症状が長期間にわたって継続している状態です。ほとんどの人は極度の暑さや長時間の運動など、特定の状況下では急性の脱水症状に陥りやすく、上記で説明した脱水症状の場合は休息と水分摂取によって解消されます。しかし、慢性的な脱水症状は単に摂取した水分よりも多くの水分を消費した結果、十分な水分がない状態で体を機能させなければならないというコンディションは問題です。慢性的な脱水症状が顕著な場合は、速やかに医師の診察を受ける必要があります。
慢性的な脱水症状を放置しておくと、血圧や腎臓結石などのよろしくない症状につながることがあります。上記でまとめたとおり、濃い色の尿、極度の喉の渇き、めまい、に加えて筋肉疲労などがあります。
慢性的な脱水症状の症状は少し異なります。人によっては水分が不足していることにさえ気づかないかもしれません。体が水分摂取に対する感度を低下させ、たとえ水分補給をしていても、身体は少ない水分でやりくりしようとするために起こります。慢性的な脱水症状の兆候としては以下のようなものがあります。
肌の乾燥やかさつき
便秘
常に疲労感がある
筋力低下
頭痛がよくある
慢性的な脱水症状の原因
慢性的な脱水症状の原因はさまざまです。慢性的な脱水症状を引き起こす原因は以下のようなものがあります。
温暖な気候の地域に住んでいる
屋外での作業が多い
1日を通して水分補給の機会が少ない
頻繁に下痢をすると、脱水症状になることがあります。以下のような消化器系の疾患があると下痢を起こしやすくなります。
炎症性腸疾患
非セリアックグルテン過敏症
脱水症状は子どもにも起こります。喉の渇きを感じていない乳幼児は急性の脱水症状に陥ることがあります。また、発熱、下痢、嘔吐を伴う子供の病気でも子供は脱水症状に陥りやすくなります。幼児の脱水症状には気を配りましょう。
また、妊娠中や授乳中は、脱水症状のリスクが高くなります。妊娠によって引き起こされるツワリによる嘔吐で、適切な水分補給レベルを維持することが難しくなります。
慢性的な脱水状態を調べるには検査が必要です。検査によって脱水症状の程度がわかりますし、その後の検査結果を比較するための基準値があれば医師が急性の脱水と慢性の脱水を区別するのに役立ちます。
慢性的な脱水症状の検査には以下のようなものがあります。
尿検査-尿を検査することで、医師はあなたの体が十分な量の尿を出しているかどうかを確認することができます。
基礎代謝パネル-この血液検査では体内のナトリウムやカリウムなどの電解質のレベルがわかります。腎臓が老廃物を効率的に処理できているかどうかもわかります。
慢性的な脱水症状の治療法
慢性的な脱水症状の場合、普通の水を飲むだけでは体内の電解質バランスを回復できないことがあります。ここでも体内で失われた水分を回復させるために電解質を加えた飲み物が勧められます。一度に大量の液体を飲むのではなく、少量の液体を頻繁に飲む必要があるかもしれません。慢性的な脱水症状がひどい場合は脱水症状が改善されるまで入院して点滴を行い、血液中に直接水分を送り込む必要があるかもしれません。また、慢性的な脱水症状がライフスタイルや職業、食生活に関係している場合は、医師と協力して脱水症状が起こりにくくなるように変更することができます。考えられる管理方法は以下の通りです。
毎日の水分摂取量を記録する
アルコール摂取量を減らす
ストレスをためない
利尿薬の服用を控える
カフェインが原因で水分が失われている場合はカフェインを控える
慢性的な脱水状態から回復するにはどのくらいの時間がかかる?
脱水症状の回復にかかる時間は、根本的な原因によって異なりますし、脱水症状になってからの期間によっても異なります。入院が必要なほど脱水症状がひどい場合や、熱射病を伴っている場合は退院できるまでに1~2日かかることもあります。
慢性的な脱水症状と合併症
慢性的な脱水状態が続くと他の健康状態を引き起こす可能性があります。吐き気、頭痛、めまい、筋肉のけいれんなどの症状は、脱水症状の進行に伴って続いたり、悪化したりします。継続的な脱水症状は、以下に関連しています。
腎機能の低下
腎臓結石
高血圧症
尿路感染症
腸管障害
認知症
慢性的な脱水症状は深刻な状態です。脱水症状を起こさないように注意して、脱水症状を引き起こす習慣や原因に対処することで、長期的な健康状態を改善していきましょう。
アスリートの水分補給
ここでスポーツ中の水分補給の代名詞である長時間の持久走における水分補給についての研究を紹介します。
スポーツ選手が脱水状態になるとパフォーマンスが低下することが多くの研究で確認されています。持久系アスリートはトレーニング中や後に糖質と電解質を含む飲料を摂取する必要があります。炭水化物(糖質)は消費されやすく、Na(+)は水分の保持に適しています。競技中の飲用はトレーニングや競技の後、または前にのみ水分を摂取する場合に比べて望ましいデーターがあります。アスリートは汗をかくため、水分を十分に補給することができません。トレーニングや競技中の適切な水分補給はパフォーマンスを向上させ、運動中の熱ストレスを軽減させて、血漿量を維持し、疲労を遅らせ、脱水や汗の損失に関連するさまざまな傷害を防ぎます。
一方、持久力競技の前、中、後に水分を過剰に摂取すると、Na(+)の枯渇を招き、低ナトリウム血症を引き起こす可能性があります。持久系アスリートは、トレーニングや競技中に、約4~8%の糖質溶液と電解質を含む水分を摂取して、汗の損失を補うことが必須です。競技の1~2時間前に約500mLの水分を摂取し、その後も一定時間ごとに冷たい飲み物を摂取することで、汗による水分損失を補うことが推奨されます。1時間以上の長時間にわたる激しい運動を行う場合は、30~60g/hの糖質とNa(+)を含む溶液(水分量0.5~0.7g/L)を600~1,200mL/h摂取してください。トレーニングや競技の前、中、後に適切な水分補給を維持することは体液の損失を減らし、パフォーマンスを維持し、最大下運動心拍数を下げ、血漿量を維持し、熱ストレス、熱疲労、そして場合によっては熱中症になるリスクを減らすのに役立ちます。
持久系アスリート以外のケースや研究もここにまとめておきます。
スポーツ選手の身体能力の低下は2%程度の低いレベルの脱水でも観察されています。比較的軽いレベルの脱水でも激しい運動をしている人は持久力の低下、疲労の増加、体温調節能力の変化、モチベーション低下などのパフォーマンス低下の経験が報告されています。水分補給は、これらの障害から回復させるだけでなく、運動や脱水によって誘発される酸化ストレスを軽減することができます。
軽度の脱水症状はウェイトリフティングなどの無酸素運動やローイング(ボート漕ぎ)などの短時間の運動よりもテニスや長距離走などの持久系運動により大きな影響を与えるようです。
水分補給のまとめ
この記事では私たちの健康にとっての水の重要性、電解質の働きとバランス、脱水症状のタイプ、および水分補給全般の理解における私たちのギャップについてまとめようと試みました。日々の運動量や電解質のバランスや濃度を飲料、食事共に個人のライフスタイルに合ったものにしていかないといけないので、全人類共通の水分補給の方法は存在しません。引き続き皆さんと共に熱中症や断水症状の予防だけでなく、日々のパフォーマンス向上に繋がる水分補給に学べたらと思っています。
このページの記述は以下の文献に基づいています。