バイオハッカーサミット ヘルシンキ 2019

 
Biohacker Summit Helsinki 2019

Biohacker Summit Helsinki 2019

Biohackingってなに?

「バイオハッキング」とは最先端の科学やテクノロジー、生理学、栄養学、そして人類の歴史や受け継がれてきた良い伝統を活用して健康で幸福な状態(Well-being) とパフォーマンスの最適化を目指すことです。もともとの語源はDIYバイオから来ているのですが、DIY(Do It Yourself)バイオではなく、「科学、テクノロジー、自然を通じてより良い人生を送るためのバイオハッキング」がタテキにとってのバイオハッキングです。

お前いつからバイオハッカーになったんだ?と思う方もいらっしゃるでしょう。実は数年前からより良い人生を送る為のバイオハッキングをアスリート目線、ヘルスコンサルタント目線、アカデミア目線で追求してきました。付き合う人達もドクター、有名教授、有名コーチまで様々なネットワークの中で日本人一人、オタクのように勉強の毎日を送っています。

そんな中、知り合いを通じてフィンランドに本社があるBiohacker Center BHC Incに学会へ招待されました。日本ではバターコーヒーで有名なデイヴ=アスプリー氏がバイオハッキングのコンテンツを発信したり、主とした学会を開いてますが、実はバイオハッキングの学会が最初に開かれたのは2014年フィンランドのヘルシンキでした。今回の学会は5周年記念で光栄な事にVIP待遇で招待され、来年開催のアムステルダムでは日本人バイオハッカーとしてスピーチするオファーもいただきました。さぁそれはどうなることか、とにかくヘルシンキ出張では多くを学び、経験しました。

会場には千人を超えるヘルス&ウェルネス分野、生産性向上分野、テクノロジー分野、企業家、科学者などのエキスパート達が集まり、50以上のブースが立ち並び様々な商品や技術が紹介されていました。バイオハッキングは全体的な生活分野と自身の関係を最適化するコンテンツなので、ブースで紹介されてるいるのはプロテインパウダーのような従来のサプリではなく、ニュートピック(スマートドラッグ)、酵素促進サプリ、睡眠導入機器、瞑想サポートデバイスなど日本では馴染みのないコンテンツばかりです。

バイオハッカーサミットは今までヨーロッパを中心にエストニア、スウェーデン、イギリスそして北米ではカナダで学会が行われました。

What to expect?

今回の学会には50人を超える登壇者が様々なウェルネスの分野について講演がありました。中にはニューヨークベストセラーの作家や有名な教授によるレクチャーも聞口ことができて本当に為になった。スピーキングの段取りは本家のトリオであるテーム=アリーナ、ヤッコ=ハルメトヤ、オリィ=ソヴィヤルヴィの3人が進行役で仕切っていました。

学会の出展者は主に以下の通りです。

  • バイオハッキング装置、セラピー用品

  • 生化学テストキット、バイオマーカー分析分野

  • ウェアラブル、モバイルアプリ、デジタルヘルス

  • 栄養、サプリ、スーパーフード

  • 生活と仕事のスマート化

  • 運動、スポーツ用品

  • ヘルス&ウェルネスサービス

登壇者及び出展者の共通言語は英語で、フィンランド語を喋れなくても全く苦労しませんでした。例えばこの学会で紹介されてる商品やサービスを日本に売れるか?という疑問が読者さんにあると思いますが、答は即答でNoです。先ずほぼ彼ら全員の姿勢が「日本に行きたい」ではなく「日本が来るの?」という立ち位置で上記で紹介した出展者のジャンルですが基本は玄人向けのアドバンスで「バイオハッキング」の基本が全く浸透していない日本人にとっては「あやしい」としか印象を与えません。

しかし絶対に日本の皆さんと共有したい事は、このような学会のように例えばお医者さんとパーソナルトレーナーなど他分野同士ですが「健康」や「ウェルビーイング」に貢献しているプロフェッショナル達が集まる、ネットワークを構築する「ハブ」は絶対に必要だな、と思いました。

アメリカではカイロプラクターはドクターの学位があります。しかし整形外科の先生とカイロプラクターの先生は大抵の場合「不仲」です。お互いがお互いをディスり合っている印象です(注意:あくまでもタテキの意見と感想です)日本ではどうでしょうか?東洋医学を学んだプロフェッショナルと西洋医学を学んだ従来のお医者さんとの交流は?今まさに必要とされている予防医学の分野で理学療法士、栄養士、パーソナルトレーナー、整体師さんとメディカルライセンスを所有しているお医者さんとの関係は?

多くの消費者にとって優先順位を決めてあれが正しい、これが間違っていると多すぎる情報を与えるより、様々な分野のプロが集まって相互作用を創り出す。その景色を多くの人に見てもらう方が取捨選択やはじめの一歩を踏み出すきっかけにつながると思います。

じゃあ誰がリーダー的存在になってやるかって?

人生思い立ったら即行動!祖国の為にタテキは頑張りますよー。

オーラリングCEOペッテリさんと

オーラリングCEOペッテリさんと

OURA オーラリング

日本ではちょくちょくユーザーがいらっしゃるようですね。タテキも愛用しています。イギリスのヘンリー王子が使っていることが話題になりました。バイオハッカーサミットのメインスポンサーでもあるOuraはバイオハッカーを代表するウェアラブルです。なんとタテキのクライアントの一人がオーラーリングの出資者でもあり、CEOのペッテリさんから直々にお話しする機会をいただきました。

日本でHRV(Heart Rate Variability)をリカバリーやストレスの数値化に使われる事は近年までありませんでした。タテキがHRV、心拍変動数を起床後に毎朝測るようになったのは5年前のこと。ヨーロッパのトップサッカークラブでは選手にGPSを装着させてポジションごとに1日の走る距離や心拍数を記録したデーターに合わせて個人個人にあったコンディショニングを進めたり、世界を会場にするフォーミュラー1の世界ではドライバーの時差ボケ対策や試合会場の時差とストレスレベルを可視化する試みを知ってアメリカ以外の研究に興味をもったのは懐かしい記憶です。

交感神経や副交感神経のバランスをプロスポーツ界で唱える人は日本では少なく、何を基準にアスリートのオーバートレーニングを計測するか不透明でしたね。最近はフィットビットやアップルウォッチでHRVを可視化できるようですが、ウェアラブルによって正確性はまちまちなのがタテキの印象です。

オーラリングの睡眠パターンや計測システムの研究に携わるベンジャミン=スマー教授は前日のVIPディナーで紹介していただき光栄でした。教授からはオーラの分析する仕組みを直接説明していただき大変勉強になりました。フィンランドの会社なのにアプリやウェブサイトは英語のみ。英語圏を中心に広まっていますが、ローカライズに慎重なのは製品に対するプライドとクオリティの維持。オウラの社員全員が生理学の知識を持っており、決してお金儲けに走らずに足元固めていく姿勢に脱帽です。こういう生の考えや話を会話を通じて聞けた時初めて「ある程度の英語を理解できてよかった」と実感します。

サリーチェア代表のベッシーさんと

サリーチェア代表のベッシーさんと

Salli サリー・チェア

もしタテキが「今すぐできるバイオハッキングはなんですか?」と質問されたらきっと一日1万歩以上歩く、1日の食事摂取時間を短くする、座って仕事しない(スタンディングデスクなど)、日光浴をするなどお金をかけずに環境や生理学をハックする方法を紹介すると思います。

サリーチェアは日本では歯医者さんのワークチェアとして幅広いシェアがあるみたいですね。サリーチェアを発明したベッシーはタテキの理想とする未来を生きている先輩、70歳でケトルベルを振り回し、ガンガン懸垂できて広大な大自然の中で住み、ビジネスを何個も経営して基本近所で採取した野菜、果物、そして狩猟で狩ったヘラジカなどが中心のダイエット。ぎゃー、理想の歳のとり方を示してくれてる方です。

サリーチェアはベッシーが乗馬をしていた時に閃いたデザインです。馬に跨る姿勢とバランスの取り方、そして水深が深いプールなどで直立した姿勢をターゲットに開発されたのがサドル型のデザインでした。サリーに座る事によって骨盤が傾かず、大腿骨の関節と骨盤が圧迫されず血液の流れが悪くなるのを防ぎます。サリーチェアのタイプによっては歯医者やセラピストのような体に負担がかかる姿勢を要求されるプロフェッショナル用に対応した機能の椅子もあります。骨盤が傾く>腹筋を使わない>内蔵型れる&お尻の柔軟性がなくなる>代謝が落ちる、もう思いつくだけで悪いことがいっぱいですね。正しい姿勢は脳への血流を良くするので生産性や集中力、創造性の向上にも期待できますね。

ベッシーの健康に対する情熱は脱帽です。長時間座り続ける事による生殖器への圧迫は男女ともに健康リスクがあります。女性は血行悪化は卵巣の働きを悪くするのは最新の科学を追求しなくてもお母さんやお婆さん方が「お腹周りは冷やしてはダメ」と言い伝えられていますし、子宮頸管の圧迫は出産時のリスクを高めます。男性にとっても両足で「タマタマ」を圧迫し続ける事は前立腺癌のリスクを高めます。アメリカの健康志向コミュニティーでは長時間座り続ける事は「第三の喫煙」だと言われているのも事実です。

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ストロングファーストのケトルベルの資格を持つタテキにとってサリーのデザインには驚きました。多くの人が柔軟性とモビリティの違いが分からず、スクワット、デッドリフト、そしてケトルベルのスイング時の「安定性」を重視した姿勢や力の入れ方を学習するのに時間がかかります。でもサリーに座って正しい姿勢になったら肩を落として腹筋をこれでもかと力を入れて引き締めればいいだけ、つまり瞬時に正しいフォームや力の入れ方を体験できるので、後は「その感覚」を忘れずにサリーを使わず実践すればスキルを学習できます。パーソナルトレーナーの手助けになること間違いなし!

ブースにてタテキはベッシーと人体と解剖学について話し込んでしまい、ベッシーは他のお客さんをお構いなしでちょっと迷惑かけてしまいました。しかも彼に説得されてアメリカでは正規ディーラーになってしまいました(別になるつもりなかったのに)。

VIP待遇

学会参加以外にVIPオンリーのサイドイベントもとても充実していました。学会前日のVIPディナー、プレゼントが詰まったギフトバッグ、ラウンジアクセス、そしてワークショップ、学会翌日のオフサイトイベントではスピーカー達と直接交流する機会がありました。

VIP ディナー

VIP参加者はスピーカ達と共に5皿のコース料理をプロのシェフと栄養学、調理法に精通したバイオハッカーから解説付きで調理シーンを見ながらハンズオンで手伝い、みんなで食しながら食材のルーツや効能についてのレクチャーを聞くというイベントでした。フィンランドならではのローカル食材や吸収率を最大限まで高めた調理法で調理されたバイオハッキング食のディナー会です。オーガニックワインの歴史や添加物の種類を解説するソムリエも参加し、美味しいのは勿論ですが、学習する方にボリュームがあるように感じたのはタテキだけではないはず。トナカイのレバーをボーンブロスで長時間低温で調理したメインディッシュが印象的でした。

アフターパーティー

このパーティーが一番ビックリしたかもしれない。フィンランドにきて1番のカルチャーショックでした。タテキがフィンランド入りする1、2週間前にできたばかりのショッピングモールの地下にある屋内複合施設でバイオハッカー達のアフターパーティーが行われました。なんとモールの地下4階に白い砂のビーチがあり、気温は26度、ビーチバレーできる横にはDJブースが設置されており、勿論フィンランドでは一家に一台、いや一スペース?のサウナがあり、参加者で踊る、ビーチバレーをする、サウナに入る、お酒を飲むという子供が想像した「こんな遊び場あったらいいな」という思いがそのまま形になった場所でパーティーが行われました。やはり北欧の皆さんはビーチに憧れるのでしょうか?

10月17日にオープンしたばかりのトリプラモールの地下

10月17日にオープンしたばかりのトリプラモールの地下

オフサイトイベント

アップグレーテッドオフサイトではVIPやゲストスピーカーのみでヘルシンキから高速電車で北に4時間以上の場所にあるサハラ地所行き、他では味わえない大自然や自然採取の技術を体験するサイドイベントです。バイオハッカー達にとってサウナは日常ですし、サウナといえばフィンランドですが、フィンランド伝統のスモークサウナを伝統的な儀式や入り方の説明を受けて実体験することもプログラムの一つでした。またサウナを利用する上でデトックスを促進させる手法を体験できたり、人間本来の潜在能力を高める為に参加者全員で運動、瞑想、食事、を共にし、テクノロジーを省いて最大限に引き出すシュミレーションをする機会にもなりました。

学会を終えて

タテキの学会レビューを読んでいただきありがとうございました。日本ではDIYバイオが主流ですが、タテキのバイオハッキングを日本のみなさんとシェアしたいので今後日本に向けた活動にも力を注いでいきます。一番印象的だったのは学会参加者のエゴがとても低かったことです。アメリカで学会に参加した事がある人なら体験しているかもしれませんが、殆どの参加者や運営側は表面的に自信満々でビジネスをゴリ押しでヒエラルキーが誰にも見える印象です。しかしヘルシンキでは運営陣は皆謙虚で、商品も紹介する側も「日本でこれを売ってくれ!」とプッシュするわけでもなく、自分達がやってきた事、やってる事に対して自信満々、情熱に溢れている人達ばかりでした。そして何より、学会参加者の全員が自然を愛していました。

今回の学会を通じて自分の役割とポジションを改めて確認しました。本家バイオハッカーセンターとも正式にパートナーシップを結び、今まで拠点先のアメリカでも様々な人からいろいろな事を日本に伝えることを勧められてきましたが、タテキ自身もっとアウトプットを増やして、それに賛同するコミュニティーができたらいいなと強く思いました。良いバイブス、一緒に作りませんか?

テーム、オリィ、ヤッコ、そしてチームの皆さんありがとう!

 
 
 
Tateki MatsudaComment