ブルーゾーン-世界に存在する5つの長寿地域-
Blue Zone
ブルーゾーン
皆さんは長寿が集まる地域「ブルーゾーン」と呼ばれる特定の地域をご存知でしょうか?健康で長生きする人が数多く集まる特異な地域をブルーゾーンと呼ばれる地域が存在します。勘の鋭い人は「え、沖縄とか?」と思うかもしれません。そうです。日本の沖縄も5つあるブルーゾーンのうちの一つです。人が今のように70歳や80歳まで普通に生きるようになったのは最近のことですが、人の寿命はおよそ20~30%の割合で、遺伝的な要因に左右されると考えられています。残りは、運動や食事といった環境やライフスタイルなどの要因が人の寿命に左右すると言われています。様々な要素が理想的に組み合わさり、世界には幸せで健康で長寿な人が人生を楽しんで過ごしている地域が存在します。
人口統計学者のミシェル・プーランとジョバンニ・ペスがセンサスの人口統計を収集していた際に、長寿者が多いイタリアのサルデーニャ島バルバギア地方に「青色マーカー」で印をつけたことに由来し「ブルーゾーン」と呼ばれるようになりました。ブーラン博士とペス博士が行ったこの研究ではサルディーニャ島の人々から人生の中で趣味や目的を持つことによって数字的な寿命だけでなく、老人コミュニティーの中において健康寿命が伸びるかもしれないという結論を導き出しました。
タテキはアメリカでヘルス&ウェルネスの講義を頼まれたとき、よくブルーゾーンを例に挙げてレクチャーします。Dan Buettner氏のBlue Zones of HAPPINESSとSolutionを数年前に読んでから「健康」に対する考え方が変わりました。ダン・ビュイトナー氏は「ナショナル・ジオグラフィック」誌の記者を務めており、世界の研究者達とのチームを組み、共に5ヵ所のブルーゾーンを特定しました。書籍には各地で徹底的な調査研究をおこない、ブルーゾーンの各地域から共通するルール9つを発見しました。更にブルーゾーンとアメリカを比較し、100歳以上の人口割合は10倍、心臓病やガンの割合はわずか数%、平均寿命も10年以上長いという統計が出ました。
現代社会で人生を送る我々にとって、健康の定義や充実した人生を見直すきっかけになる研究です。日本語でも初期の研究をまとめた書籍が販売されていますね。
世界に散らばる5つのブルーゾーン
デンマークの双子研究によると20%から30%が遺伝で残りは環境によって寿命の長さに因果関係があると報告されています。ビュイトナー氏と彼のチームは5つの特定地域を発見しました。
サルディーニャ島バルバギア地方・イタリア
山間の高地地方でサルディーニャ島内部の地域。男性センテナリアン(100歳以上)の人口が世界で最も多い地域
特徴
本土イタリアとは孤立した独自の伝統が存在している。食事はおもに地産地消。肉、魚を狩猟し、野菜は自ら栽培するライフスタイル。植物由来のものが中心で、肉を食べるのは日曜日と特別な日のみ。ビュイトナー氏のチームが最初に見つけたブルーゾーン。センテナリアン(100歳以上)の人口はアメリカの人口比と比べて10倍
イカリア島・ギリシャ
エーゲ海に浮かぶ島で中年の死亡率と認知症になる確率が最も低い地域の一つ
特徴
山間地帯で1日を通して歩行数がとても多い。野菜、果物、オリーブオイルなどに代表される地中海食の他にも利尿効果のあるハーブ(ローズマリー、セージ、オレガノなど)が多く摂取することにより健康的な血圧を維持している。ミルクは牛乳ではなく山羊ミルクを摂取し、昼寝の習慣や年数回の断食期間が存在する。85才になるとアメリカ人の50%は認知症になるが、イカリアでは10%未満
ニコヤ半島・コスタリカ
中年の死亡率が最も低く、世界で二番目に男性センテナリアン(100歳以上)の人口が多い地域
特徴
“plan de vida”という人生について前向きな考えを持つ文化がある。家族や近隣の人々との時間を最優先し、お互いをサポートする生活様式が確立されている。社交的なネットワークがコミュニティ内で形成され、家族中心の生活をしている。食事は々は普段から抗酸化物質に富んだフルーツやミネラルが豊富な硬水を常飲している。日照時間が長く(ビタミンD不足にならない)、夕飯のボリュームは少なく、早い時間に摂取されているのも特徴
カリフォルニア州ロマリンダ・アメリカ
セブンスデー・アドベンチスト教会信者がアメリカで最も多い地域。北米の平均寿命の統計と比べると10年長い
特徴
週一回の安息日を設けることにより、家族、神、仲間意識、自然などに考えを集中する時間がある。BMIの平均が健康的で日常的に軽度な運動習慣がある。夕飯は節度のある食事量と軽くて早い時間帯に摂取する。植物が多めので完食にナッツを食べる習慣も平均的なアメリカ人の生活様式とは異なる。価値観の合う仲間と過ごすことやや「おかえし」する風習も特徴的。
沖縄・日本
70歳以上の女性長寿の人口が世界で一番多い地域
特徴
「生きがい」という概念を強く抱き、独特な「模合」(もあい、琉:ムエー)という沖縄地方特有の金銭的相互扶助の習慣があり、ガーデニングを通じて1日の運動量が多い。よもぎ、ウコン、生姜といった抗酸化作用、炎症を抑えるがある薬味を自ら育て、食事は野菜中心で、大豆(豆腐、納豆、味噌など)が多いのが特徴。
Blue Zone Power 9
世界の長寿から学ぶライフスタイルと風習
ビュイトナー氏はチームを組んで、長寿を左右する20%、30%は遺伝子の影響。残りの70%、80%の秘密を研究する中、医療研究者、人類学者、人口統計学者、疫学者たちと共にエビデンスベースドの共通した特性9つを5つのブルーゾーンから発見しました。彼らはパワー9と名付けました。
1. Move Naturally 自然に動く
世界の長寿者はハードなマラソンやジムに入会して必死に運動するのではなく、1日を通して自然に意識することなくアクティブに動き続けています。庭園や家庭菜園などの風習がそのような環境を作り上げています
2. Purpose 人生の目的
沖縄に住む日本人はソレを「生き甲斐」と呼び、ニコヤ半島に住むコスタリカ人は「plan de vida」と呼びます。直訳すると「毎朝目覚める理由」です。ブルーゾーンの研究ではこのような人生の目的を悟った人は7年も健康寿命が長くなるという結論に至りました。
3. Down Shift ストレスのない生活
ブルーゾーンに住む人たちにもストレスは存在します。ストレスは慢性的な炎症をもたらし、多くの生活習慣病の原因となります。ブルーゾーンに住む人々と、それ以外の人々の違いはストレスを減らす習慣です。沖縄の人は毎日、先祖へ祈りや感謝を欠かせません。アドベンチスト教会信者は安息日に祈り、イカリア島のギリシャ人は昼寝をしてサルディーニャ島のイタリア人は食事やワインを家族と楽しむハッピーアワーを過ごします。
4. 80% Rule 腹八分目医者いらず
大食いをせずにいつも腹八分でやめておけば健康でいられるという暴飲暴食を戒めていうことわざですが、沖縄では八分目という考え方が暮らしのすみずみにまで彩られています。残り2割の「八分目まで食べたから空腹ではない」と「満腹」のギャップは「痩せる」と「太る」の境目になるかもしれません。ブルーゾーンに住む人達は遅い午後、または夕方の早めの時間帯に夕飯をとります。彼らの夕飯は1日の食事の中で最もボリュームが少なく、夕飯以降は何も食べません。
5. Plant Slant 植物中心
ブルーゾーンに住む人々の食事は植物中心で、特に豆類の摂取量が高く,、ソラマメ、黒豆、大豆、レンティス豆が主なタンパク源で、肉は主に豚肉であり100g前後の量を平均して月に5回ほど摂取しています。
6. Wine @ 5 5時のワイン(少量のお酒を嗜む)
ロマリンダに住むアドベンチスト教会信者以外のブルーゾーンに住む人々は毎日、適量のお酒を摂取します。実際、適度にお酒を飲む人々は全くお酒を飲まない人よりも長生きするというデーターがブルーゾーンの中で発見されました。ここでいう適量は1日1−2杯で、推奨されるのはサルディーニャ島の風習であるガルナッシュ品種の赤ワイン(ポリフェノールやタンニンの量が他より高い)を1、2杯を家族や友人と食事を楽しみながら摂取することです。決して1日1、2杯が上限だからと平日我慢して週末に一気に7杯−14杯ということではありません。
7. Belong 信仰
ブルーゾーンで263人のセンテナリアン(100歳以上)にインタビューしたところ、5人以外全員(258名)が信仰に基づくコミュニティに属していて、そのなかで行われる行事や活動に定期的に参加している。宗教や宗派は問題ではなく、1ヶ月に4回以上、信仰に基づくコミュニティへ奉仕、貢献すると4−14年ほど寿命が伸びる結果が出ました。
8. Loved Ones First 家族が最優先
ブルーゾーンのセンテナリアンは何よりも先ず家族を優先します。家族内の絆が強く、年老いた両親や祖父母を自身のそばで面倒見ます。(ブルーゾーンの研究では両親を介護する子供の寿命が伸びるという統計結果)家族という人生のパートナーに専念することは3年寿命が長くなるというデーターもあり、子供に対して無償の時間と愛を注ぎます。人生のパートナーに対しては責任を持って積極的に関わり、子供たちと時間をかけて思い出を構築していきます。そのような環境で育った子供は両親の介護が必要な時、より両親の世話をする傾向が見られました。
9. Right Tribe
ブルーゾーンの地域では、より健全で健康的な習慣を後押しする友情あふれる親密な社会的集団と生活を共にする道を選びます。特に沖縄では、複数の個人や法人でグループを作りお互いをサポートし合う模合(モアイ)と呼ばれる相互扶助システムがある。フラミンガム研究によると喫煙、肥満、幸せ、孤独感までもが伝染性があるります。社交的であり、より健康で長寿の集まる集団に属することは自分自身の健康的な習慣や行動の構築につながります。
ブルーゾーンから何を学ぶか?
今回の記事では健康で長生きするために世界で最も長生きしている人々に学び、自分の生活環境を健全なものに変えることが必要であることをご紹介しました。現在、薬、医療、テクノロジーの発展で世界中で死亡率が低下し、寿命が伸びているデーターがある一方、私たちの子ども世代の平均寿命は短くなると予測している研究者も存在します。現代の環境の変化が、私たちの寿命と健康に反映しています。体を動かすことが少なくなり、地球上の3/4の水が遺伝子組み換え用の農薬で汚染され、抗生物質を投与された畜産やマイクロプラスチックや環境ホルモンが流された海で育った魚介類を食べ、SNSで繋がって便利になったと言われる反面、一対一のコミュニケーションを取らない社会になってしまった現代生活について、少し立ち止まって考えてみると、世の中には大きな矛盾が存在します。私たちは病的な環境に住んで人生を送っているのかもしれません。
私がまとめた上記のブルーゾーンに住む人々によるシンプルなルールや習慣を自分自身に取り入れれば、平均して14年以上長生きできる可能性があるとダン・ビュイトナー氏と彼のチームは述べています。バイオハッキングを応用する前に、ブルーゾーンに住む方達の生活様式を学んで、自らの人生の土台を作り上げる事が最も大切なことではないでしょうか。
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