システムシンキング
システムシンキングとは?
システムシンキングは一言でまとめるなら、行動を起こす前に問題を見極めるのに役立つ考え方です。結論に至る前に質問が頭に浮かび、証拠はないけど正しいと考えてしまう事を防いでくれます。このような考え方をする人達は好奇心旺盛で同情深く勇敢にも見えるかもしれません。システムシンキングを用いたアプローチは小さい一部分をパーツで見るのではなく、物事を全体像で捉えて自分自身や周りの人の繋がりを考慮して様々な方法で問題解決できるだろうとみなす事です。
システムシンキングの特徴
このような考え方で物事の全体像を理解しようとすると、全体を構成する副組織を含んだ大小の組織(システム)の繋がりを分析、そしてそれぞれの可能性や潜在的な力を理解しようとするので、より良い決断ができるようになります。
サッカーを例にすると、サッカーを構成する要素はプレーヤー、コーチ、グランド、サッカーボールなどですね。相互関係はどうでしょう?戦略、選手間のコミニュケーション、サッカーのルールなどがあります。そしてサッカーをする事においての目的や目標は?勝利すること、楽しむこと、運動をすることなどが挙げられます。このようにシステムシンキングでサッカーを考えると私たちはいくつかの組織に属しており、下部組織、副組織が全体の中に存在します。ちょっと戦略的で哲学っぽい考え方かもしれませんね。
システムシンキングの使い方
1. 物事のシステムがどのように働くか理解してフィードバックを生かす(出力”結果”を入力”原因”側に戻す操作)
最初のタスクは全体のシステムを理解して、レバレッジをかけられる部分を見極めたり、全体の歯車に大きな影響を与えるフィードバックを明確にすることです。この最初の一歩が後でシステムの全体を少し調整するのに役立ちます。
もし生産性を上げたいのであれば、フィードバックする部分を選び改善することが必要です。数ある部分の中から取捨選択し、改善する部分と方法が良ければ生産性は上がります。反対に生産性を下げたいのであれば同じ部分を疲弊させればよいのです。
例えるならお風呂にお湯を張るとします。レバレッジがかけられる部分はお湯が出てくる蛇口と出てしまう排水口になります。もし排水口に蓋をしないで蛇口を開放していれば湯船にお湯が張る事はありません。湯船にお湯を張りたければ排水口に蓋をして蛇口を開放すれば湯船にお湯が溜まります。逆にお湯を減らしたければ蛇口を閉めて排水口を開放します。
当たり前の話ですが、例えるならこのような感じでしょうか。
この考えを自己啓発に取り込むとしたら、自身の人生の全体像からフィードバックのポイントを見つけ出す、またはレバレッジをかけられる部分を見つけ出し、その部分を改善させる、ということになります。あるバイオハッカーが「今より健康になりたい」と意気込んだ時、システムシンキングを通じてレバレッジをかける部分(小さい労力で多くを得られる)は「野菜をもっと食べる」かもしれないし、「早寝早起きをする」かもしれないし、「パーソナルトレーナーを見つける」かもしれません。そしてそのレバレッジの部分が初めての行動だとしたら「はじめの一歩」はとても小さいかもしれませんが、後にあなたの人生を大きく変えるかもしれません。
2.パターン、構図、成り行きを発見する
システムを良くしようと熱望しているうちに、そこで見えてくるトレンドやパターンがパラダイムシフトの原因になったり、または問題解決へのヒントを教えてくれます。大抵の場合、そのようなトレンドやパターンは意外な観点へあなたを導きますし、今までに考えた事が内容なアイディア、人々、場所に出会うきっかけにもなるかもしれません。
頭の良い人達は流行りや物事のパターンに対して用心深いのは容易に想像できますね。だから彼らは「変化」に精通しているのだと思います。ここで3つの観点に分けてみましょう
i. 出来事の視点
自分が描く世界をイベントの視点で考えると、その世界で誰よりも賢明になるためにできるベストな事は「リアクション」です。反応が早い!フットワークの軽い反応!柔軟に対応する反応と人生を歩む上で向上していきます。それでは具体的にどのようにイベントの視点を活用すれば良いでしょうか?
単純に「何が起きた?」と状況を把握する自問自答をするだけです。
「何が起きた」と問う事で物事に対してより意識や自覚が高まる可能性があり、見えてくるものが違ってくるかもしれません。この視点を鍛えるのに一番良い方法は数人のグループに対してストーリーを話すことです。良く話を聞いてくれる家族や友人ではなく、違う考えを持った不特定多数に話す事は楽ではありませんよね。もしそれぞれのイベント、パターンやトレンドの先が見えたら予測して計画を立てることができます。
ii. 様式の視点
自分が描く世界をパターンの視点で考えると、今度は「(継続的に)何が起こってきたか?」と問います。上記の出来事の視点は「点」で考えるのに対して様式の視点は「線」で考えます。氷山の一角は見えますが、氷山全体の大きさを実際に見るのは難しいですね。氷山の一角が見える部分と見えない部分を分ける線は「見えない所」から「見える部分」を分析すると考える手法です。
システムシンキングは見えている所だけから状況を仮定しません。ある一定の過去から今まで何が起こってきたかと考えます。アイスバーグ理論も理解しておくと役に立ちます。
iii. 構図の視点
自分が描く世界をストラクチャーの視点で考えると、「何が問題の原因か?」と問います。導き出された答は要因や責任を押しつけてきます。もしあなたが渋滞に巻き込まれているとします。隣の車を運転している人が原因だと腹を立てることはないでしょう。「近くで事故でも起こったか?」などと「何が渋滞を引き起こしたか?」と考えるはずです。大抵は同じように「先の道は走行しづらいかもしれない」「危ない運転をする車が前にいるかもしれない」というような構図の視点で予想した答になるでしょう。もしかしたら、その視点からは導き出した答えを「渋滞が起こる原因」のトレンドとして認識するかもしれません。
構図の視点が他の視点と違う点は、あなたの活力を推進させてるは何か?と考える事自体がここで言う「構図」であり、「何が多くの出来事に影響をもたらすか」という視点で考えます。全体の中から見た自分自身のモチベーションの根源を探ったり、上記の渋滞の例や物事の前後関係を確認するためには必要な視点ですね。このようにシステムシンキングを実行する人は内部の構図に基づいて推論した結果、結論を導き出して決断に至る、という順番です。
3. 人による問題 vs システムの問題
我々が抱える問題はピンからキリまであります。商品の不備、貧困、満員電車に代表される通勤の効率の悪さはシステマチック(組織的)な問題です。自分が悪いと思っていても、無作法に振る舞ってしまう時もあります。それはあなたの中に自分を非難する仕組みがあるからです。
仮にある事業の中で自分の生産性が高くないと悩んでいるとしましょう。もしかしたら生産性が低い原因はあなたではなく、そのシステム(組織や仕組み)をあなたが改善しないといけないかもしれません。フィードバックを生かす大切さは上記でも説明しましたが、システムを見極めると直ぐに「人」が見えてきます。最近雇った新入りが商品のパッケージの工程を遅くしているのか?会社内部で適切なコミニュケーションが不足したから、あのチームのパフォーマンスが低下した?このような会社の組織のシステムを考えると再度、仕事の分野を割り当てる事がレバレッジ部分ではないでしょうか?新入りを叱りつけるより、意思疎通の取れていないチームにチームワークを大事にしろと指示するより、そもそも個々にあった分野を改めて確認して得意なポジションに割り当てる作業の方が少ない努力で多くを生むレバレッジになるでしょう。
渋滞の例でもあった通り、「新しい信号機が設置されたり」「その地域の交通法が変わったばかり」などと全体を見てから出した結論のようにシステムに基づいた解決策があるかもしれません。
学習する組織
我々の人生や社会において、システム思考は人々、団体、政策、決断、アイディア、その他様々な相互関係を正しく理解する事に役立ちます。マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院の組織学習センターの責任者であったピーター・センゲ博士が提唱した最強組織の法則5Disciplineをおさらいしましょう。こちらからはフィンランド・ヘルシンキにあるアールト大学で行われたレクチャーを観覧できます。日本語でも書籍が発売されていますね。>「学習する組織」
団体に所属してリーダーになることも、ベンチャー企業を立ち上げることも、フリーランサーになることも5つの教訓がDNAレベルで必要だと提示しています。
1. 熟練する分野を増やす(マスタリー)
流行りのオンライン授業を受ける、学会に参加する、BHCジャパンの記事を読む、読書する、会社の上司だけでなく他分野のリーダー達と自分の専門外のテーマについて議論する、周囲、同僚、自分のチームから常に学ぶ、などと自分自身が絶え間なく学習することです。
2. 自分の憶測や先入観を見つけ出す
『群盲象を評す』は、数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合うというインドの話をご存知でしょうか?目が見えない彼等の憶測やバイアスによって各自の意見と実際の象の姿が全く異なる話です。『物事や人物の一部、ないしは一面だけを理解して、すべて理解したと錯覚してしまう』ことの例えとしても用いられます。
バイアスは時に新しいアイディアの発想や自身の成長を施すような経験の機会を奪ってしまいます。自分にバイアスがあると自覚するためには自らの内側に入りマイナス思考でもプラス思考でもない考え方を応用しないといけません。(ブレイクスルー思考)
3. 共有のビジョンを築く
システムはゴールやミッションが不明確だったり無くなると停止します。組織といっても個人の集合体です。組織全体のパフォーマンスの向上は、個々人の成長とともにチームとしての成長が不可欠です。そのため互いが向き合うだけでなく、同じ方向に向かって学習し続ける組織となるためにはビジョンを共有することが大切になってきます。そしてそのビジョンは個人と組織全体を鼓舞させます。
4. チームで学習する
"Shared Learning”「学習の共有」はとてもパワフルです。チームや団体の中で一緒に学んだ時の理解力はとても強固なものです。チームで学習したレッスン、学は長期的な記憶に刻むことがしやすいため、直ぐに忘れたりしません。複雑化する環境の中で成長していくためには個人の成長だけでなく、チームでの成長が重要になってきます。
5. システム思考
システムシンキングは生涯続けて学習と改善を続けるための思考です。上記で例に挙げた 氷山の一角の原理・アイスバーグ理論(成果・結果というのはほんの一部で、水面下の見えない大部分で成果・結果の大きさが決まるという概念)と繋がっています。何かに挑戦中、大きな壁にぶつかった時などは常にシステム思考で臨みましょう。問題の詳細を理解する>レバレッジポイントを見つける>判断>適応>改善の流れです。
ピーター・センゲ博士は「学習する組織の中心には、我々が世界とは別の存在であるとする考え方から、世界と繋がっているとする考え方の転換があります。また、問題は誰か他の人によって引き起こされたとする見方から、自分の行動が問題をつくり出しているのだとする見方への転換でもあるのです」。システムシンキングは、単なる思考法ではなく、一人ひとりが世界をより良くできる存在であるという考え方、そして哲学ですね。
さて、システムシンキングの説明はとても長くなりましたが、バイオハッカーとしてあなたはどのようにバイオハッキングを人生に取り入れますか?
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